スラックレールを仕上げるうえで欠かせない、「なんでもくん」という製品があります。この「なんでもくん」は、株式会社安心堂さんが開発された「手動式小型パッド印刷機」です。
スラックレールは、この「なんでもくん」を使い1本1本にロゴを印刷して完成させています。見た目は、”ただのかまぼこ”が『スラックレール』という商品として命を吹き込まれる瞬間です。
今日は、そんな「なんでもくん」を開発された株式会社安心堂さんに”モノづくり”についてのお話を伺いにやって来ました。スラックレールはもちろん、私たちモノづくりメーカーとして、とても勉強になるお話を伺うことが出来ました。
中部大学工学部機械工学科卒。この時も勉強はしないが実験のみは好きであったが、自動車産業の盛んな中部地区での職ではなく、おもちゃぐらいは作れるだろうという安易な発想からおもちゃ業界に・・・そして一生おもちゃ屋の精神で現在に至る。
東京都足立区千住生まれ。
法政大学法学部法律学科卒業後証券界に身を置くも10年後、子供の時からものづくりに憧れがあり、生涯現役でいられる仕事を求め徒手空拳のまま全く経験の無い印刷業を開始し今日に至る。株式会社安心堂として手動式パッド印刷機「なんでもくん」を開発し、販売している。またパッド印刷技術を活かし文字入り線香「焚経香」を発売している。
株式会社安心堂:http://www.nandemokun.net/
パッド印刷との出会い。
安心堂さんが開発された、”なんでもくん”という製品は、製版から印刷まで全て自分で行う事が出来る、優れた手動のパッド印刷機です。
パッド印刷とは…
パッド印刷とは凹版を使用して版上のインキをシリコンパッドに一次転写し、被印刷物に二次転写を行なうオフセット印刷の一種です。弾力のあるシリコンパッドで印刷するため、平面ばかりでなく多少の曲面や凹凸面にも名入れが可能です。
比較的費用が安い印刷方法ですので、ノベルティなどの作成には、パッド印刷をおすすめさせていただくこともあります。 小さな文字、ロゴマークなども比較的表現しやすい印刷方法です。
引用:パッド印刷.com
「パッド印刷」という言葉に聞き覚えがない方もいらっしゃると思いますが、簡単に言うと、柔らかいシリコンで転写する印刷方法で、湾曲した面にもキレイに印刷出来るのが特徴です。
今回伺った安心堂の丸山会長は、このパッド印刷の伝道師と呼ばれるほど、パッド印刷に精通し、その技術を広めようとされている第一人者。そんな会長さんとパッド印刷との出会いを伺いました。
電話機が、こうやって回すダイヤル式から、1つ1つの番号に別れてるボタン式に変わったでしょ?
で、その電話機のボタンって真っ平らじゃなくて、少し凹んでるんですね。それまでは真っ平らなところに印刷してたので、比較的簡単だったんですが、湾曲しているものに対して印刷する事は非常に難しくて、そこで色々と探し回った結果パッド印刷に出会ったんです。
実際にキレイに印刷出来るようになったのは、かれこれ半年以上掛かりましたね…
さすがですね。
無我夢中で勉強して、色んな所に足を運んで…そんなこんなやっているうちに、その印刷ってのが僕の仕事になっちゃったんですね。
どうしても、こういった特殊な技術は人に教えたがらないですからね。
でも、僕はそうじゃなくて、この技術を多くの人に知ってもらって、色んな人たちが自分たちに合った使い方をしてほしいと思ってるわけです。ビジネス的に言うと、もしかしたら良くない判断かも知れませんが、それでも僕がこの技術を教えて起業した人とかもいて、その人たちが幸せになっていくと自分も嬉しいもんですよ。
実際に「スラックレール」の印刷も、会長に直接指導して頂いて、この”なんでもくん”で行っているので、ぼくもその1人だと思ってますよ。
「スラックレール」と”なんでもくん”
その中で、製品はもちろんなんですけど、この「時代と逆行してる感」って言うんですかね、こういうアナログなところに凄く惹かれた事を覚えています。
でも、”なんでもくん”は壊れたら自分で直したり、細かい調整も自分で出来たり、電源使うわけでもないし、自分の手で変えていけるっていうのが、ぼくの考えるモノづくりと重なる部分がとても多かったんです。
この形に至るまでに何度も試作しましたけど、“なんでもくん”は必要な物以外はないシンプルな設計になっています。
シンプルイズベストっていうのも、非常に共感を覚えました。その割に、細かくて精密な印刷も出来るし、次の行動がしやすいような動きも計算されている優れものですよね。
本当に「これ!」っていう部分だけ残して、そこを残すにはどこを削ったら良いか、その機能を最大限生かすにはどうしたら良いかっていうのを、ずっと考えて作りましたからね。
パッド印刷の伝道師として
こないだなんかも、電線の先端に印刷を入れたいという会社さんがあって、実際に伺って教えてきましたよ。そこは大きな企業さんで、工場と敷地の広さにびっくりしちゃいましたね。笑
“なんでもくん”の広まり
実際に先日ぼくの知り合いの作業所さんにも、導入されましたけど、最初の設定さえしてしまえば繰り返しの作業で印刷出来るので、良いですよね。
あとは、高島さんがご紹介して下さる方は、みなさんモノづくりが好きで情熱があるので、一緒にお仕事していて楽しいし、本当に嬉しいですね。
“なんでもくん”自体、モノづくりが好きな人じゃないと使いこなせないと思いますし、呼ばれて来ただけのような人だと、お互いの時間ももったいないですもんね。
すぐには難しいかも知れませんが、モノづくりって地域との関連性も深いので、そういった面でも”なんでもくん”が活躍出来れば、なお良いですよね。
知的障害をお持ちの方って、ずっと同じ作業をする事に長けていると聞いて、その考えに至ったんですが、”なんでもくん”での印刷作業は、とても単純な行動の繰り返しなので、相性は良いと思います。
実際に、島根県の作業所に導入頂いて、道の駅の商品に印刷しているという話を聞いたので、少しずつそういった流れが出来始めています。
ぜひ、そういった事例を増やして、”なんでもくん”と一緒に地域が盛り上がると良いですね。
印刷が入る意味と価値
スラックレールも、正直この素材さえ手に入れば、誰だって作れるものです。そこにちゃんとロゴを入れて、ぼくたちが責任持って作ったものです。というブランドにしていかないと、ただのグッズで終わってしまう気がしてます。
確かに凄いし、便利で、実際に同じような印刷って出来るんでしょうけど、いざ「これに印刷してみて」って言ったら大変ですよ。
そういう事が手軽に出来るのも、この”なんでもくん”の良いとこだと思っています。
スラックレールも、実際それくらいのレベルから始まってます。今後、もっと大量の生産が必要になってきても、例えば協賛品として寄贈先の名前を入れたりだとか、スラックラインの大会で使われるときは大会名入れたりだとか、そういう風にシーンに合わせて特別な+αとして使いたいとは思っていますね。
何より、そういう物の方がもらって嬉しいですもんね。
最後に
私たちでは想像も出来ないほど、様々な経験を積んでこられた丸山会長から、モノづくりについてのお話をたくさん伺うことが出来ました。
スラックレールも、企画から製造、販売までたくさんの方々の力を借りて成り立っている商品です。そこには、ただモノを売りだけではない、モノづくり精神がありました。
最後に、丸山会長がモノづくりで大切にしている考え方についてお話して下さいました。
諦めたり、辞めたりしたら失敗になっちゃうけど、実際に続けれいれば失敗じゃない思っているので、そんな気持ちで今までモノづくりやってきましたよ。
続けていれば、失敗にはなりませんから。
本日は、ありがとうございました!